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  三遊亭圓窓&榎本裕之 
              とき:02/10/27(日)14:00〜17:00
                 場所:川口市立曽根公民館(JR線・西川口)


                 番組:ギターソロ 榎本裕之
                    落語   [ぞろぞろ]
                    ジョイント 榎本・圓窓「民話の世界」
                    落語   [叩き蟹]圓窓





たっぷりと「 3時間+3時間 」のジョイント
筆 文落連 まど香


 圓窓師匠からFAXをいただき、急遽、文落連の何人かに連絡して、当日、都合の
付く者が五人(児遊、ゴン、みよ、つぐ江、まど香)、川口へ行ってまいりました。
埼京線ができたおかげで川口は近い近い。
 公民館なんて、なんとノスタルジックなネーミング!! 昔、森だった所を切り開
いて造られたそうですが、ちょうどよいキャパのホールでした。
 ただ、高座がテーブルを二つ重ねて足をビニール紐で縛り、その上に座布団という
拵え。


 本番になって、師匠が滑り落ちやしないかとみんなでハラハラ。噺家さんというの
は、どんな状況でも演るんですねぇ。
 さて、今回のジョイント。「もう、堪能! 満足!」
 師匠、榎本さん、そして客席。芸の気が行き交うとは、このことでしょう。なんと
も心地よく、引き締まった3時間でした。
 師匠は最初の噺で55分。
 まず「話す・聞く・思い描く」ということの大切さを落語紙芝居[ぞろぞろ]に触
れながら熱っぽく語られる。
 思わず頷いている人たちが多く、「紙芝居は静止画像だから、TVで失われがちな
この三つの感覚が養われる」という師匠の言に納得。
 そのあと、落語[ぞろぞろ]をたっぷりと聞かせていただきました。もちろん、教
科書の「ぞろぞろ」にはないクスグリが入りまして、まさに「話す・聞く・思い描く」
とはこのことでした。
 師匠にとっては当たり前なのでしょうが、登場人物それぞれの性格描写が素晴らし
いのです。これぞ、噺家。
 この日、ギターのファンでお見えになった方が、圓窓ファンか落語ファンになるこ
と間違いなし。


 そして、「話す・聞く・思い描く」が充分に客席に浸透した後の榎本さんのギター。
目をつぶって聞いておりますと、田園が見え、小道が現れ、白壁に飾られた花は風
に揺れ、やがて、リボンを付けた女の子が走り去って行きます。また、舞踏会の曲で
はドレスの裾が回ります。
 クラシックに弱い私はそれらの曲が本当にそういう曲なのかどうか、知る由もあり
ませんが、確かにそのとき私はそれを思い描きました。
 師匠に誘発された脳細胞は優しい音色の世界を味合わせてくれたのです。


 コーヒーブレークのあと、小咄とギターのジョイント。
 正直いって、落語とギターが合うのかなと思っていましたが、これがまぁ絶妙。掛
け合いも面白く、ウ〜ン。
 この二人の間を説明するのは難しいです。今度、ぜひお聞きあれとしか、言いよう
がありません。


 さて、いよいよ、トリで師匠の左甚五郎シリーズから[叩き蟹]。
 マクラで「どの世界にも名人はいるもので」と振っておいて、茶店から名物の黄金
餅を盗んだ子供が大勢の面前で折檻されようとするのを、行きずりの男が助けに入り、
餅代100文のカタに木の端切れで蟹を彫って置いていく。
 その蟹はなぜか甲羅を叩くと横に這うので評判となり、餅屋は大繁盛。
そして、2年後……、ということになる。
 噺の初めに登場するその男。ただの物見高い男のように見えたが、そのうちに、「ウ
ン……? ただ者ではないな……」となり、実はただの野次馬から少しずつ、ただ者
でなくなって、ついには左甚五郎になっていく描写が細やかですごかったです。
 内面から、だんだんとその人間が大きくたくましくなっていくのです。
 あとの客席との質疑応答の際、師匠は「人物を描くにはその人になりきる」と答え
てましたが、その通りだったのです。私は「心で? 腹で?」と自問自答してみまし
た。


 そのあとの打ち上げに参加させていただいて、飲むは食うは笑うはで、また3時間。
師匠の若きメル友(もち、女性)ともお会いし、交流の広さにオドロキ!!
 ところで、榎本さんのお知り合いにツボ押し名人がいらっしゃいました。
「師匠、やっていただいたら」の声に師匠は頑なに笑って拒否反応。その姿はまるで
石の地蔵さん。師匠の頭と心はとっても柔らかいのに、こと身体に関しては意外と硬
い。恐がり屋なのか? 
 それがまたなんとも可愛らしく、師匠の新しい面を発見しました。ごめんなさい。


 たっぷりと3時間+3時間のジョイント。
 寄席の雰囲気も好きですが、各地での企画の会も大好きで、今日は足をのばして味
わった至福の時間でした。
2003・2・11 UP






 No3 " 圓 朝 祭 り "
2002・8・11
 谷中 全生庵 歩記っ子  木ノ島 純子
 先だって、円朝墓前にて献句


     泉下にも汗をうながす蝉しぐれ  純子


  いやあ、暑い、熱い、あヅーイおまつりでした。
 文落連同期六名で参りましたが、お天道様に負けたのか、それともホントに忙しい
のか(?)4名は先に帰りまして、ホントに暇な私と、もうヒトリが取り残されて、
ラスト迄。
 5時から始まるオークション、そして奉納踊り、住吉踊り連中の到着を噺家さん達
が、無線と携帯を使って、時々刻々の緊迫感。
「今、出た! 今、浅草を出ましたァー!」
 そのやりとり、さながらリアルタイムの刑事物。
 果たして、彼等は間に合うのか!


 とはいえ、オークションは権太楼、さん喬、志ん五、さん吉各師匠による、噺家さ
んならではの名口上に、境内は大爆笑。
 私も三代目金馬師匠(あの名人の)の名入の浴衣を一万円でゲット。お宝、お宝。
ついでに各師匠のサインもゲット。これもお宝。
 小さん師匠の竹刀三本。七千円から二万五千円。これはちと安すぎ。人間国宝の汗
とサインが入っておりますぞよ。
 私も欲しいかなと思いましたが、泥ちゃん除けになるのがオチなので、ここは黙っ
て見ているだけ。


 そうこうしている内に、住吉踊り連中が汗ダクダクで到着。
 これには感激。
 金馬師匠を中心に引き締まった踊りでした。
 亡き志ん朝師匠の「置き土産」を、しっかり受け継いで行こうという気迫が全生庵
に漲り、蝉の声も忘れる程でした。


 さて、それこそ玉の汗の円窓師匠、西日をもろに浴びながらの句会は大盛況の様で、
 用意した投句用紙は完売とか。
 私も一句ひねって正楽師匠の俳切り画の短冊にしていただきたかったのですが、そ
の場でなかなか思い浮かばず、帰ってから冒頭の句になった訳でした。
 売上金を数えている円窓師匠、無心でありました。


 5時半もまわり、いよいよお開き。
 金馬師匠の音頭で全員揃っての三本締め。呼吸の合った手拍子が境内に鳴り響き、
亡くなった方達にもさぞかし嬉しく届いた事でしょう。
 さて、もうヒトリの取り残された相方は、境内でゴミ袋片手に後片付けを手伝って
おりました。 殊勝、殊勝。


 また、来年もと、全生庵を後にして、相方と二人、涼を求めて居酒屋に。
 肴は本日の戦利品。


  1・新品のキャンプチェアーには、南喬師匠のお尻逢いのサインが入っていて、
    200円
  1・権太楼師匠の亡き母上の形見の帯(?)。未だ葬式代も払えないという孝行
    話に思わず涙の、200円。合掌
  1・小田原丈さんから無理やり買わされた、南京玉簾になれなかった、ただのす
    だれ。いいのだ、君はウチの植木鉢の囲いになろう。ただの100円 。


 などなど、出した汗の分だけ焼酎を流し込み、楽しい一日でございました。


 圓窓師匠、一門の皆様、本当にお疲れ様でした。
 次は高座で・・・・・
                    (相方はごんちゃんこと、後上君です)
2002・10・9 UP






No2 "末広亭企画公演 圓窓[ほうじの茶]"

 2002・6・4 新宿末広亭 夜席 17時〜
「サッカー見ずに寄席にいました」 歩記ニスト 
文落連会長 山崎周造


 5月に、圓窓師匠出演の6月上席の前売り券を末広亭の窓口で買って、チケットを手に
した直後、木戸の人から「3日の”寄席の日”は半額になりますよ」と言われた。
「おいおい、先に言っておくれよ」と思いつつ考えた。
「翌日の4日はワールドカップの日本戦。その影響で入りは悪いだろうなぁ。私一人でも
客席にいて、お役に立とうかな」とささやかな決心をした。
 当日の夜、日本戦のわりには100名前後の入りでした。
 昨日の寄席の日は2階まで入ったとか。実は、私……、寄席の日は池袋演芸場にいまし
た。(笑)
 客席にいても、寄席近辺の店はサッカーの応援で盛り上がっている様子で、建て付けの
隙間から騒がしい応援の声が飛び込んでくる。
 それがために、いまいち乗り切れない芸人さんもいました。
 いよいよ、トリの圓窓師匠。
 ちょっと硬い感じで高座に。どんな演出で圓窓師匠が自分の創作の舞台落語[ほうじの
茶]を聞かせて下さるのか、わくわくする。
 まず、いつものように中央の座布団に座ってマクラを語りはじめた師匠が、本題に入っ
て間もなく、見たい芸を念じながらほうじの茶をいれると、楽屋から太鼓のウスドロがあ
って、上手の隅に移動して座ると、中央に金原亭世之介さんが登場して、踊り”惚れて通
えば”。
 あと、念じて茶をいれる度に落語家さんが出てきて寄席芸を披露する趣向。
  2番 初音家左橋さん  動物の物真似
  3番 柳家さん八さん  政治家の物真似
  4番 再び金原亭世之介さん 彦六、談志師匠の物真似
  5番 大勢で高座舞い 並木駒形
 さすが噺家さん。お客さんは大喜び、大うけでした。
 楽しい演出で他の演者さんがやられても、大うけ。
 以前、国立演芸場でやられた「楽屋 うら・おもて」でしたか、あの企画も大変面白く、
楽しかったことを思い出しました。
       (圓窓註:古いねぇ。それ知っている人って、ほとんどいないよ(笑))
 また、新たな挑戦を楽しみに、期待しております。
2002・10・18 UP






No1 ”三遊亭圓窓一門会”

2002・6・23 池袋演芸場 18時〜


[手紙無筆]窓輝  [紙入れ]萬窓  [天災]窓里
落語紙芝居[ぞろぞろ]渡辺享子・佐々木秀哉
[きゃいのう]吉窓  [一分茶屋]圓窓





「子供たちに伝えたい」
道連れ参加 竹内ひろ子
 この度、阿久津博さんの紹介でこの会に出席いたしました。
「イメージする事は人類最大の資源である」というフレーズを耳にしました。
 子供の言語教育に携わって20年。
 年々、子供達の表現力とコミュニケーション能力が低くなっていくのを感じます。
 ビジュアルなものに常に刺激され、人の話を聞いてイメージする体験の薄いまま成
長していくところに大きな原因があるように思います。
 そのような中、今回の圓窓一門会へのお誘いはとてもうれしく感激いたしました。
 また一門の皆さんとの懇親会でのいろいろな方々との出逢いも、とても新鮮で感動
的でした。
 4年生の男の子が発表してくれた紙芝居「ぞろぞろ」。
 このような年代から落語が身近なものになる事は、とても素晴らしい事と思います。
 私が小さい頃はラジオからよく落語が流れていたものです。夏の夜、虫の音を聞き
ながら落語を楽しんでいた事をつい思い出しました。
 ラジオやテレビで見ていた所がこのうな場所だったのかと言うことから始まり、生
で伝わる迫力、まさに話芸なのでしょう。
 聴きながらどんどん頭の中に絵が浮かび、さながら映画を見ているようででもあり
ました。
 特に圓窓師匠の[一分茶屋]では、舞台の上の様子や観客側、またライトまで見えてく
るようで劇場のようにも感じました。
 このような機会を得たことをまた子供達にも伝えながら、多くの若い子供達に素晴ら
しさを感じ取って欲しいと思っています。
 有り難うございました。





「娘が学校で落語の勉強をしていた」
道連れ参加 古財(こざい)明美
 きっかけは10歳になる愛娘だった。
 和室に座布団を敷き、いきなり一席始まった。
 身振り、手振りが入ったその話をする娘の姿を微笑ましく思った。
 聞けば学校の国語の授業で落語[ぞろぞろ]を習っていて、グループでその落語の発表
をするという。
 娘はその宿題を楽しんでるよう様子で、クラスの元気の良い男の子達を中心に、落語
がブームになっているというから驚きだ。
 職場に阿久津博という味のある先生がいて、時折、仲間と寄席に行くという話をして
ていたのを思い出し、娘の事を話してみた。
 そして「本物の噺家さんを呼びたい」という希望を伝えたところ、話はトントン拍子
に進み、4年1組にお呼びする段取りがついた。
 三遊亭窓輝さんに来ていただく事になった。
 子供達が教科書や机上の学習から飛び出した、本物に触れる機会を得られた事は幸せ
である


 私の落語経験はそこから始まって、新宿末広亭での楽しかった舞台落語「ほうじの茶
」、そして今回の池袋演芸場での圓窓一門会へと足を向けた。
 いろいろな噺家さんがいて、一枚の座布団の上で様々な噺が繰り広げられる。
 初めは「フーン、こんな感じなんだ」と遠目で眺めながら聞いていたが、何時の間に
か、噺の渦に巻かれて大口を開けて笑っている自分がいた。


 幼な子から熟男熟女まで楽しめる落語の世界。
 私は聞き手として一歩を踏み入れたばかりだが、これから少し探ってみたいと思って
いる。
2002・8・4 UP