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俳句三昧

四九八句会 だくだく連句 句集諸々 御蔵山一日一句

半歌仙 一  だ く だ く 連 句 1 師走の夜

1999年12月10日


 そもそも、この連句の始まりは、我が母校の文京高校の岡田先輩からML〔浮世床〕へ来た久しぶりのEメールからだった。


岡田「久しぶりのメールですが、ただいま、国立演芸場から帰宅したところです。
   円窓師匠の復活落語第2弾[夢現実焙茶湯煙]を聞いて、興奮さめやらず、2
  時間近い電車の中で繰り返し、その面白さを反芻し、師匠のすごさと、寄席の持
  つ可能性を考えていました。
  (中略)
   幕が降りて、充分に堪能した客が出口のほうに向かって少しして、舞台の方か
  ら三本締めが聞こえてきました。帰り始めた客は、もう一度、楽しさを出演者と
  共にかみしめたような……、いつもと違う千秋楽の余韻でした。


     師走の夜 楽の手締めに 送られて   晴坊


   これを企画し、演出した円窓師匠の力に感服した次第。ありがとうございまし
  た」


 このメールの中に、さりげなく書かれてある俳句に、「晴坊」(以後、岡田を晴坊
と記す)、だなんて…。
 先輩が句をはくとは知らなかったな、と思いつつ、こっちは大喜利の了見で下句を
付けて、返信メールを出した。


     男子出生 なるか雅子妃   まるまど


 なにを隠そう、「まるまど」とは圓窓(以後、まるまど、と記す)の俳号。
 晴坊さんの国立での落語観賞日が11年12月10日。
 この朝、「雅子さま、ご懐妊」というニュースが日本中に流れ、高座でもさん八が
発表したりして、客席も沸いた。
 そんなことが、まず、頭をよぎったので、この句。
 すると、晴坊さんより、すぐに、メール。もちろん、新たな句が添えてあった。


     待たるるは 佐渡の朱鷺より 首長くして    晴坊


 我が女房にこの連句を見せると、
「あなたの"なるか雅子妃"の"なるか"は乱暴ね。スポーツか博打みたい。やはり
晴坊さんの"待たるるは"という使い方のほうが上級よ」
「晴坊さんは相当やっているようだ」
「それがいけないのよ。『たしなんでいらっしゃる』と言いなさい」
「晴坊さんは、皇室の出かね」(笑)
 こんな話のあと、晴坊さんへ、句を付けて、返信。


まるまど「実は今、一四、五年前を思い出してます。
   なにを隠そう。あたしが、現メール仲間のあきらさんにパソコン通信を誘われ
  て、最初に興味を持ったのが、連句のコーナーだったんです。
   すぐに、始めましたよ。もちろん、あきらさんも仲間に入って。
   その宗匠がおおらかな人で、
   『連句のルールは細かくやると、とても大変なので、とにかく、五七五 七七
  の字数で、付かず離れずの句を楽しみましょう』
   というファージールールでやっているのです。
   一年弱は続いたかな、、、、。
   そのうちに、肝心の宗匠がいなくなっちまって、解散……。(笑)
   あたしは俳句は習ったことありませんので、我流の我流です。
   数を指を折っているだけですが、とても、勉強になりました。
   蕪村の句に、狸が人家の戸を叩く、というような作品があることを宗匠から知
  らされて、『落語の[権兵衛狸]だ』と興奮したものです。
   あのときの、知らないことを知った喜びって、すごいもんでしたよ。
   てなことで、『夢よもう一度』で、連句をしたいのですが、付き合ってくださ
  いよ。


     花魁のクツ 今 街を行く  まるまど


   向こうが首を長くしてんなら、こっちも足元を長くしてやろうと、まさに大喜
  利用の句。まさにファージーでしょう。これで行きましょう」


 すると、どうだろう。たった二人の連句が反響を呼んだか、無銭さんが登場してく
れた。
     幾たびも 転び転びて 雪の道   無銭


 さすが、札幌在住の人だ。雪道を描くのは手馴れたもんだ。
 と、なんと、あきらさんが酔聯という俳号でさっそうと登場。
 酔聯(以後、あきらを酔聯と記す)さんも札幌の出身だ。
 だが、登場したのはいいのだが、どうしたことか、七七、を飛ばして、いきなり、
五七五ときた。


     膝を折り 握り締めたる 五鹿の土   酔聯


 おいおいおいおい。それに、〔五鹿の土〕がわからないよ。
 と、思っているうちに、また、続けて酔聯さんから、また、五七五がきた。


     車曳く 人力の息 石だたみ   酔聯


 どうなってんだい、こりゃ。2000年問題が早めに来たか! 両者、同じ札幌な
のに、どうしてこうも違うのか。
 とりあえず、作られた順に記してみよう。


     師走の夜 楽の手締めに 送られて     晴坊
           男子出生 なるか雅子妃     まるまど
     待たるるは 佐渡の朱鷺より 首長くして  晴坊
          花魁のクツ 今 街を行く     まるまど
     幾たびも 転び転びて 雪の道       無銭
     膝を折り 握り締めたる 五鹿の土     酔聯
     車を曳く 人力の息 石だたみ       酔聯


 五七五が三つも並んじゃってる。駄目だ、こりゃ。(笑)
 案の定、無銭さんから、警告メール。


無銭「五七五、七七、これは崩さない方が良いのでは、と思います。はなはだ僭越で
  すが、ちょっとこだわって


     幾たびも 転び転びて 雪の道    無銭
           七七、の句を今募集中
     膝を折り 握り締めたる 五鹿の土  酔聯
           七七、の句を今募集中
     車曳く 人力の息 石だたみ     酔聯


   でもって、とりあえずここまで進めるのも一法と思います。
   どなたかに、七七の埋め合わせをお願いしましょう」
酔聯「ただ今、顔面、真っ赤です……。すっごくバカでした。今、気がつきました。
   僕が575に575を付けちゃったわけですね。ごめんなさい。
   あ〜〜〜〜恥ずかしい。
   脳みその記憶領域はさくらやで買ってきて増設するって訳にはいきませんから
  大事に使っていますが……(笑)、昨日、接待でお酒飲んで記憶がボロボロって
  感じ」
まるまど「晴坊宗匠! 宗匠はいずこへ!」
晴坊「冗談じゃないよ、宗匠なんて。
   そういえば、『宗匠、いずこへ』と言う文句、昔、読んだことがあるな…、花
  田清輝の本で…、誰だっけ……」
圓窓「本はどうでもいいよ、晴坊さん。(笑)
  言い出しっ屁、てぇことがあります。ファージー宗匠でもかまいませんので。
 よろしく。
  パソコンの前で、みなさんが頭を下げてますよ、先輩」(笑)
晴坊「まるまど師匠のお言葉ではありますが、ヤッパリ、宗匠就任は、時期早尚(尚
  早)につき、ご遠慮します」(笑)
無銭「いえいえ、ここは是が非でも、お願いします。晴坊さん、そうしょう(宗匠)
  …?(笑)そして、一件落着させちゃって」
晴坊「なんだか、町内の若い衆に寄ってたかってナニされたようですが、ゴネテいて
  もしゃあないし、やりますか。
   無銭さんも、仕掛人、兼 交通整理人、兼 後見人として、応援よろしくお願い
  しますね」
まるまど「晴坊さん。宗匠の件、受諾、ありがとうございます。ほとんど、押し付け
  でしたが。(笑)
   大臣の就任、あるいは、落語[紀州]と同じで、即、引き受けては重みがない
  もの。(笑)
   頼みますよ。あたしのHPにも載せて笑涯楽習しますので、よろしく」


  てなことで、やっと、なんとか、晴坊さんを説得して、宗匠(以後、晴坊を宗匠
と記す)になってもらった。
 物事、説得力だけでは駄目なんだそうで、相手に納得力がないと、巧くまとまらな
いんだそうです。先輩は納得力がある人だから、こっちも助かりましたよ。(笑)
 で、早速、五七五連続事件の解決を依頼した。


まるまど「さて、就任早々、すいませんが……」
宗匠「大変なことになってますね。戯れに遊ぶべからず……、と…。
   七七 と入れたいけれど、〔五鹿の土〕て、なんのことか、辞書を引いてもわ
  からないので、エイヤ ! といきますか。
 

     尻をはたいて なに食わぬ顔   晴坊


  こんなので、どうです?」


 さすが、宗匠。
 おかげで、こうなりました。


     幾たびも 転び転びて 雪の道      無銭
       尻をはたいて なに食わぬ顔     晴坊
     膝を折り 握り締めたる 五鹿の土    酔聯


 すると、まもなく、酔聯さんから、薀蓄を垂れるメールが届いた。


酔聯「宗匠、ありがとうございます。なんか、生まれ変わったようです。
   ついでに、ウンチクを……。
   五鹿の土ってのは、宮城谷さんの〔重耳〕という、春秋戦国時代の小説の中に
  出てきます。
   主人公の重耳(後の晋の文公)が、流浪していたときに、五鹿という場所でお
  腹が減って動けなくなった時に、農民に食べ物を恵んでもらおうと頼んだら、食
  い物をくれないで土をよこしました。
   重耳は腹が立ったのですが、側近の一人が『土をくれるというのは、土地をよ
  こすのと同じ事、これは吉事でございます』とかなんとか言ってなだめました。
   その後、重耳が晋に戻って公になってから、五鹿を占領しまして、その時、『
  あ〜、あの時の話が現実になった』と感慨にふけるわけです。


   今、朝日新聞で宮城谷さんが〔沙中の回廊〕という小説を連載しているのです
  が、これは重耳が文公になってからのストーリで五鹿の話も少しだけ出てきます。
   朝日新聞を取っていない人も、http://www.asahi.com/paper/novel.html で読
  めますので、ぜひご覧ください」
まるまど「朝日、とってるけど、読んでない。ちょっと、読もうか」
宗匠「あきらさん。解説、ありがとうございます。
   それよりも、混乱した連句が心配で……」
酔聯「心配無用。宗匠の七七にちょいと移動を願って、あたしが、七七と五七五の二
  句を足します。


     えくぼの赤子も 生意気な口     酔聯
     車を曳く 人力の息 石だたみ   酔聯


   すると、見事にこう並ぶのです。


     師走の夜 楽の手締めに 送られて      晴坊
          男子出生 なるか雅子妃      まるまど
     待たるるは 佐渡の朱鷺より 首長くして   晴坊
          花魁のクツ 今 街を行く     まるまど
     幾たびも 転び転びて 雪の道        無銭
          えくぼの赤子も 生意気な口    酔聯
     膝を折り 握り締めたる 五鹿の土      酔聯
          尻をはたいて なに食わぬ顔    晴坊
     車を曳く 人力の息 石だたみ        酔聯


  どうです?」
無銭「提案ですが、混乱を防ぐ程度のルールがないといけないと思います。
   とりあえず、頭に浮かんだことを書かせてもらいます」
まるまど「そうですね。ファージールールとは言っても、天下の志ん生のようにはい
  きませんでしょうから」(笑)
無銭「投句は、ML参加者は自由にいつでも投句できるんですよね」
宗匠「そうですね」
無銭「投句しなくても良しとするのでしょうね?」
まるまど「当然です。強制的に『投句せよ』てなことを言ったら、あたしは殺されち
  ゃうでしょう」(笑)
無銭「投句が重なった時、例えば五七五の次の七七に複数の投句があった時には、ど
  うなるのでしょうか?
   1)書き込みの時間順でしょうかそれとも
   2)距離が一番投句(遠く)の方が優先でしょうか?
   3)全部採用して、そのどれかにつなげる」
宗匠「私は、先着順で一本にしたほうが、スッキリすると思いますが…。それでは、
  Eメールらしさがない、という意見もあるでしょうが……。
   なんか、私は、優柔不断で……。(笑)
   こういうときは、先例を見るのが一つの手で、まるまど師匠と酔聯さんの連句
  コーナーは、一年続いたそうですが、そのルールはいかがでしたか?」
酔聯「どうしてたんだか、全然、思い出せないです。師匠、お願いします」
まるまど「すぐに詠める人ってぇのがいるんですよ。あたし、昔々、〔笑点〕をやっ
  てたもんで、よくわかるんですが。(笑)
   すぐできる、という面白さは、ありますが、じっくり思案しての作品の良さも
  必要です。
   そこで、ある程度の時間を置いて、なるべく多くの人から作品をいただいて、
  で、選者の晴坊宗匠が一つ選ぶというのは、どうでしょう?」
無銭「投句の時に、遅れて到着した分はどうしましょうか?」
まるまど「学校の遅刻も先生の判断。連句も選者の判断に任せましょうよ」
無銭「一人の方が二句以上続けて投句なさるのは、どうなのでしょうか?」
まるまど「賑やかでいいじゃないですか。多くを期待しましょうよ」
無銭「なるほど、さすが年の…、えっと、アノソノ、年輪の大きさを感じます」
まるまど「年輪じゃありません。宗匠におっ付けているだけです。(笑)
   とりあえず、それで、スタートして不備な点が出たら改良しましょう。朝令暮
  改で、堂々といきましょう」
宗匠「私が選者をするのは、気が進まないけど、連句の進め方はいいですね。案ずる
  より生むが易すし、といいますから、やりましょう」
無銭「とりあえず、"石畳"のあと、


     腰をおろして まず一思案   無銭


   いかがですか、宗匠」
宗匠「いただきましょう、それを」
まるまど「では、あたしが、そのあとを、


     さまざまが どうにかなって 新玉の   まるまど


   とってくれるかな…」
宗匠「それに、続けて、


     コンピューターの 誤作動もなく     晴坊


   どうだ!」(笑)
まるまど「ということは、先着順に決めたんですか、宗匠?」
宗匠「いえ。せっかく再開したので、とりあえずつなげようと思いまして」
まるまど「宗匠。いろんなこと、しないでください。素人は混乱しますから」(笑)
宗匠「了解。
   それにしても、”コンピューターの誤作動もなく”は出来が悪いな…。


     腰をおろして まず一思案         無銭
     さまざまが どうにかなって 新玉の    まるまど


   ここまではいい。せっかく"新玉の"と誘っているのだから、ここは素直に、
 ”年たちかえる”と受けた方がいいのかな……。


   ところで、次の七七は、 明日(12/19)18時までです。みなさんからの
  投句を待つというのはいかがですか? そのうえで小生が『エイヤ!!』と決める
  わけ。
   そのあとは、また、自然に流れるように……。
   ということで、私も、前句"コンピューターの"という句を取り消して、一句
  いれておきます。こういうのを、お手盛りという。(笑)


     年たちかえり はや2000年     晴坊


   よろしく」
まるまど「ところで、この連句の会、まだ名前がない。漱石の猫みたいです。なにか
  正式名を付けませんか。
   それと、とりあえず、晴坊さんが永久宗匠ということで。で、馴れてきた段階
  で、選者は月番交代ということにするのはどうでしょう。宗匠も気楽に投句でき
  ると思いますので。
   それと、句の解説、説明、言い訳、大いに賛成です。勉強になりますので。
   そして、やはり、宗匠の出きる限りの、一言、感想、評がいただきたいです。
   そんな、わがまま、よろしく」
宗匠「あたしの読んだ本によると、百韻とか三十六句(歌仙)などの方法があるよう
  ですが、とりあえず十八句(半歌仙)で、ひと区切りつけ、みんなで次の工夫を
  しようかなと、内心思っているわけ。
   つないで、〔師走の夜〕一巻のまとめとしようかと」
まるまど「〔師走の夜〕一巻、というのは?」
宗匠「発句が"師走の夜 楽の手締めに 送られて"でしたので、上句の"師走の夜"
  をとって、半歌仙の名前にしたんです」
まるまど「わかりました」
酔聯「いいですか、今度はちゃんとやります。


     三軒茶屋の 今に驚く     酔聯


   お願いします」
宗匠「酔聯さんのをいただきましょう。


     三軒茶屋の 今に驚く     酔聯


   いただきました」
無銭「連番を付けてみました。わかりやすいと思います。


     発句  師走の夜 楽の手締めに 送られて     晴坊
      脇       男子出生 なるか雅子妃     まるまど
      3  待たるるは 佐渡の朱鷺より 首長くして 晴坊
      4       花魁のクツ 今 街を行く   まるまど
      5  幾たびも 転び転びて 雪の道       無銭
      6       えくぼの赤子も 生意気な口  酔聯
      7  膝を折り 握り締めたる 五鹿の土    酔聯
      8       尻をはたいて なに食わぬ顔  晴坊
      9  車を曳く 人力の息 石だたみ      酔聯
     10       腰をおろして まず一思案    無銭
     11  さまざまが どうにかなって 新玉の   まるまど
     12       三軒茶屋の 今に驚く     酔聯


    どうでしょうか」
宗匠「それは助かります」
無銭「それと、投句のとき番号だけだと、なんかもう確定しちまったように、目に移
  りますので、〔11 投句〕とかなんとか、記するといいのでは」
宗匠「そのアイデアもいいですね」
無銭「で、ついでに12番への付け、


     13 投句  ロケットで うさぎは帰る 冬の月    無銭


   また、ついでに、言い訳。
   茶屋から旅立つ、の発想です。
   本来は11の句を受けて新年の句にしたかったのですが、”うさぎ””冬の月
  ”、と戻ってしまいました」
宗匠「いいなあ、さえざえとした冬の月……。
   他にありませんか。なかったら、これをいただきます。


     選 13   ロケットで うさぎは帰る 冬の月    無銭


   さ、あとを続けてください」
かなこ「恥ずかしながら、連句という言葉をこの度、初めて目にしましたが、これが
  始まってからの皆様のやりとりから、推察させていただきますに、
   連句とは
    1.五七五と七七が交互にくる。
    2.直前の句と関連する句をつくる。(その関連は、語呂でも意味でもよい
   )
    3.タイトル(今は〔師走の夜〕)に沿った内容がよい。
   ついでに、
    4.格調高きよし、ボケもよし、駄洒落もよし。
   と、おっしゃっていただければ、何でも五七五にすれば私のような知識も教養
  も無い者でも投句できそうな気がしてくるのですが……。
   おまけに宗匠と交通整理人がいてくださるので、後は野となれ山となれの、や
  りたい放題。
  『そのアイデアなら、この単語を使えば』なんていう先達の嬉しいご指導がある
  ともっといいですね。
   つまり、『投句(talk)する』というより、『ちょっと(chat)やっ
  てみる』という気持ちで、普段の会話を繋げていってもいいのでしょうか?


   以上、認識に誤りがありましたら、どうぞご教授ください。
   ちゃきちゃきの初心者ですので」
宗匠「今は、『ファジーに行こう!』ということで、ルールらしきものは、上記の1と
  2だけです。
   短時間にこのルールを発見した、かなこさんは大変な才能があり、近い将来の
  宗匠有力候補です。
   3のタイトルに沿うかは、一句一句には関係なく、あたしが『17〜18句』
  で、〔師走の夜〕にふさわしい収まりにしたいな』と思っているだけのこと。
   4はそのとうりですよ。格調高きよし、ボケもよし、駄洒落もよし。やりまし
  ょう、ぜひ」
かなこ「では……、言い訳しつつ、初投句します。


     14 投句  対のレンズも 冴え渡り   漱犬


   解説。
   夕べのお月様が丸くて、最近、ここで話題のレンズのようでした。
  『冬の月がきれいだった』って事と、『私の両眼のレンズはまだ近くもよく見え
  るのだ』の〔おごりの春〕気分を入れてみました。
   ご指導よろしくお願いいたします」
宗匠「いいですな、忘年会つづきで、兎の目も真っ赤というところ……。
   ちょっと伺いますが、名前なんですが、これ…、漱石の漱に犬で、漱犬ですか
  …?」
かなこ「ア!!! 自分で自分を大笑いしつつ訂正します。(笑)
  〔漱猫〕と書くつもりが、〔漱犬〕と書いてしまいました。ほんとは、〔漱猫〕
  です。(笑)
   家に犬がいるもので、つい、漱犬って……。何にも言い訳になってない……。
   あんまり笑って、今夜は眠れそうにありません。自分だけうけてごめんなさい
  」
宗匠「漱石の作品に〔我輩は犬である〕というのがあるのかな、と一瞬、思いました
  よ、あたしは」(笑)
かなこ「ああ、恥ずかしい……。


     14 投句  対のレンズも 冴え渡り    漱猫


   です。よろしく」
まるまど「かなこさん。そう興奮せず、落ち着いて書いてください。
   俳号の件は諒解。
   ところで、”冴え渡り”という五文字でいいんでしょうか。こういうのを破調
  とかなんとか、言うんでしょう?」
かなこ「まごうかたなく、うっかりです。本調を知らないのに破調なぞ、とてもとて
  も」(笑)
無銭「ファージーですから、こだわらずに七五でも宜しいと思います。七七とするな
  ら、お名前の一部をとって、


     14 投句  対のレンズも 冴え渡るかな  漱猫


   となさっては、如何でしょうか」
かなこ「ありがとうございます。是非そうさせてくださいまし。そそっかしい、とい
   うより、数に弱いんです、あたしは」(笑)
宗匠「連句の世界に、こういう救助法があるかどうか、知りませんが、結構です。
   選者として、どうしようかと悩んでいたんですが、助かりました。
   無銭さん。迷える選者に、愛(合い)の手を……、ありがとう」
酔聯「漱猫(漱石の猫の意味ですよね?)さんは初登場って事なので、あたし、嬉し
  くなって、14句につけます。


     14 投句  対のレンズも 冴え渡るかな         漱猫
     15 投句  うれしいと メガネが落ちる コメディアン  酔聯


  〔対のレンズ〕で〔メガネ〕は、だぶってて良くないとは思ったんですけど、あ
  の満面の笑顔を思い出してしまって、やっぱり、これしかないかなと。13句、
  14句の関係からは離れられるので、まあ、いっかなとも」
まるまど「また、混乱してきたぞ。(笑)
   句の確定しないうちに、いろんな投句にどんどん付け句していいのかな、とち
  ょっと考えてます。あたしは、迷うほうなので。(笑)
   やはり、混乱を避けるほうが、いいのでは、と……。
   もう一つ、どっちが、面白いシステムかということもありますが…」(笑)
無銭「基本的には句が確定してから、次の付け句の順とは思います。特に、締め切り
  日が決められている場合はその方が良いと思います」
宗匠「では、只今募集中の付け句の、


     13   ロケットで うさぎは帰る 冬の月      無銭


   への付句七七ですよ」
無銭「締め切りは26日(日曜)です、ヨゴザンスネ」
まるまど「鉄火場だね、まるで」(笑)
ただしろう「突然、失礼します。とても句才がないので傍観してましたが、ふと思い
  ついたので、お笑い種に。兎が飛んでった、というあとということで、


     14 投句   竜の口から 次はよろしく    ただしろう


   よろしくお願いします」
まるまど「ただしろうさん。"竜の口"って、宗教家は関係ありの句?」
ただしろう「こういう突っ込みがくるから困るのです。(笑)
   単純に竜の形をした筒先から水が出る、あの神社などにあるあれを連想しただ
  けです。卯から辰ということで。日蓮上人受難の物語というような高尚な話では
  ありません」
まるまど「わかりました」
宗匠「さて、と…、


     15 投句  うれしいと メガネが落ちる コメデイアン    酔聯
 

   これ、どうしましょうか」
まるまど「やはり、確定してないものに句を付けるのは、混乱を招きます。
   連句人口を増やす(笑)ためにも、わかりやすく、コツコツやりましょうよ」
宗匠「じゃ、今の段階ではこの句をなしにして。いいですか、酔聯さん」
酔聯「いいですよ、ボツで。ボツボツ行きますから」
宗匠「そんな寂しい洒落を言わないで」
まるまど「今、あたしは句を作らず、句の本ばかり読んでます。
   復本一郎著〔俳句と川柳〕講談社現代新書、の本を薦めたい。和歌、連歌、俳
  諧、発句、俳句、川柳、狂句、などなど、資料を解りやすく書きこみ、楽しくな
  るような解説になってて、いいです。
   この著者は芭蕉の"古池やーーー"の句をテーマにした一冊の本を出してます。
  これも、面白い。いずれ、創作落語にしますがね」
宗匠「本はさて置いて、14番の投句を締め切ります。
   今回は、二句あり、選者としていささか緊張気味ですが、


     13     ロケットで うさぎは帰る 冬の月     無銭
     14 投句 ア    対のレンズも 冴え渡るかな    漱猫
     14 投句 イ    竜の口から 次はよろしく     ただしろう


   選者見解、ないし、言い訳は以下のとうり。
   あたしが13番を採るとき、"うさぎは帰る"の干支の変わり目を読んでいます。
   投句イは、"竜"を入れて、それにつないだ句で、すんなり読めるのがいいと
  ころです。
   じつは、あたしも似たような句を頭に浮かべていまして、


     叢雲起こる 竜の鼻息


   というんですがね。"次はよろしく"には敵わないや。
   投句アは、レンズのようなきれいな月、それを見る読み手の二つの良い目も冴
  えて、うさぎも迷わず月に帰れますように、という気持ちでしょうか。
   ほんとに迷ったんですが、ここは、連句の命である『前へ前へと転ずる』とい
  う点を買い、投句ア、漱猫さんの句を採らせてもらいます。


     選 14     対のレンズも 冴え渡るかな     漱猫


   どんどん行きましょう」
無銭「宗匠の句もいいですね」
宗匠「さて、次は15番ですが、締め切りはいつにしましょうか。
   あたし自身は、年内決着のつもりで、あとは一瀉千里でと思っていましたが、
  ドガチャガやるか、コツコツいくか、思案橋。(笑)
   せっかく投句者も増え始めたところですので、今のペースで行きましょうか。
  いかがですか」
無銭「当然です」
宗匠「というわけで、ご異論なければ、締め切りは12/28(火)18時とします。
   つぎは、五七五です。沢山の投句を、初めての方も遠慮なく、お願いします」
まるまど「では、早速、


     15 投句  見つかって 黙って立ち去る 覗き穴   まるまど


   こんなところで…」
宗匠「どうやら、本を読み終わったようですね、投句をするところをみると」(笑)
まるまど「はい、読破しました。お願いします」
無銭「酔聯さんの句を復活させましょうよ、クリスマスに絡ませて。(笑)


     15 投句  うれしいと メガネが落ちる コメディアン  酔聯


   そこへ、まるまど師匠の、


     15 投句  見つかって 黙って立ち去る 覗き穴     まるまど


   う〜ん、”覗き”を先に使われてしまった。どうしよう。


     15 投句  来春に 花を咲かそう 受験生        無銭
   

   レンズ → 眼鏡 → 受験生 という関係……」
まるまど「なるほど。花を咲かそう、となると、受験生だな。卒業生が花を咲かせた、
  なんて、あまり聞かないもんな」
宗匠「ただいま、最後の忘年会から帰宅しました。さほど酔ってはいませんが、酔っ
  てます、ハイ…。
   15番の投句は、三句、いずれもベテランのみなさんからで」
まるまど「おれたち、もうベテランになっちゃったよ。宗匠(少々)どこじゃない、
  大層、酔っているな」(笑)
宗匠「酔っていませんよ。続けますよ。いただいた、都々逸…、ああ、酔ってる…。
 (笑)


     15 投句 ア  うれしいと メガネが落ちる コメデイアン 酔聯
     15 投句 イ  見つかって 黙って立ち去る 覗き穴    まるまど
     15 投句 ウ  来春に 花を咲かそう 受験生       無銭


   選句 、おおいに迷いましたが、イ まるまどさん のをいただきましょう。


     選 15  見つかって 黙って立ち去る 覗き穴     まるまど


   どうでしょうか〜〜。酔ってませんよ〜〜、ウィ〜〜」(笑)
まるまど「あたしのを選ぶところをみると、酔ってない。まともだ」(笑)
宗匠「選評 ないし 言い訳。
   今回の投句の共通点は、いずれも人物が登場したこと。
   始めから振り返って見ますと、これまで登場した人物は、
   2 雅子妃 4 花魁 6 赤子 9 車夫 13 うさぎ  です。
   そろそろ新しい人物に会いたい頃だ、というタイミングを捕らえたのは流石に
  ベテランの三氏だけあると感心。
   ア:コメデイアン  イ:覗き見の「男?」  ウ:受験生
   いずれも、前句14のレンズに着眼して、人物の心境もわかりますね。場所も
  ガラッと変わりました。
   あとは、選者の趣味の問題で…。
   作者のコメントにあるとうり、
   ア は、”対のレンズ”と”メガネ”のダブリが気になるところ。
   ウ は、”花を咲かそう”とくれば、”受験生”とやや平板なのが気になりま
  して…。これは選者が試されている、というのが実感です。
   ごじゃごじゃ言いましたが、


     選 15 見つかって 黙って立ち去る 覗き穴   まるまど


   をいただきました次第です、ウィ〜〜。


   16番は、原則、七七で、付けてください。
   ベテランも初心者(?)も歓迎。締め切りは12/30(木)18時とします」
まるまど「とってくださって、ありがとうございます。
   本を読んで、『発句は切れ字、季語が入ってなくてはいけない』という俳諧の
  ルールを知りました」
宗匠「まるまど師匠、ご推薦の本。〔俳句と川柳〕、いま読み始めましたが、いやア
  面白いですね。そう、〔切れ〕とはなにか、なんて、じつに勉強になります。
   あたしは、俳句らしきものは詠みますが、連句というのを知らずに、宗匠を押
  しつけられて、本を読んだり、ホームページを覗いたりしていますが、けっこう
  愛好者がいるようですね。
   前句をみて、それに付けるというのは、俳句の鑑賞と似たところがあり、読み
  手の気持ちを推量しながら、少し前にボールを投げてやる、キャッチボールの面
  白さかな」
弥寿音「超・ド初心者の弥寿音です。
   実は、気になりつつ、忙しくてじっくり拝見できなくて…。
   ところが、風邪をひいて、二連休を家でのんびりできることになり、気になっ
  ていた連句シリーズ、やっとしみじみ読みました。楽しそう!!
   下手はへたなりに、今年のしめくくりの初参加をお許し頂ければ幸いです


     15    見つかって 黙って立ち去る 覗き穴   まるまど
     16 投句     胸の秘め事 聞くな言うまい   瓢吉


   名前は瓢吉です。思い付きで、とりあえずお邪魔します。これからも、楽しみ
  に皆様のをお勉強しま〜す!」
宗匠「いやぁ、瓢吉さんの16番投句には驚いたな。師匠の回りには隠れた才能の持
  ち主がいっぱいいるんですね」
酔聯「瓢吉さん、もう、凄すぎ! とても、あたしは投句はできません。
   今、あたしはぞくぞくします。ちゃんと説明できないんで、こういう表現にな
  りますけど、いやらしいとか、みだらとか、そんなんで無いですからね。(笑)
  念のため。でも、色気はありますね」(笑)
まるまど「弥寿音の瓢吉っつぁんは、踊りのこと、歌舞伎のこと、国文学のことって、
  あたしのよき師匠です」
宗匠「みなさん、発想を変えて、負けずに七七と付けてみてください。いろいろと付
  けやすい句だと思いますよ」
まるまど「前句がいいので、ビビッチャウ、なんてんで、(笑)


     16 投句  鴛鴦の 一羽となりし 冬の沼  まるまど


   あたしは怖さ知らず、我流ですので」
宗匠「あのね、まるまどの師匠。16投句は、15の”見つかって黙って立ち去る覗
  き穴”の付けですから、、七七でないと……」
まるまど「ギャー!!! やった!!! あたしとしたことが!!!」(笑)
宗匠「それとも、16投句の締め切り12/30(木)18時は過ぎているので、瓢
  吉さんの"胸の秘め事聞くな言うまい"に付けたのかな? それなら、つながる
  し、いい句ですよ」
まるまど「そうそう、それそれ、それです。それにしてください。(笑)
   締め切り過ぎて、瓢吉さんのが一句しかなかったので、それで確定だと思って、
  五七五を投句……」
宗匠「あのね…。サッカーを御覧なさいよ。いくらゲームの時間は過ぎてても、審判
  が笛を吹かなければ試合は続行なの」(笑)
まるまど「そうですよね…。あたしがうっかり、勝手に、笛を吹いて、申し訳ありま
  せん」(笑)
宗匠「あたしも、かみさんの手伝いで、大掃除の真似事をしますので、年内はこれで
  納めの句とさせてください。
   そして、新年はいよいよ17番。1/2(日)の〔詠み始め〕にしましょう」
まるまど「シュ―――――ン」
宗匠「師匠がシュ―――――ンとしてますので、こうしましょう。
   連句16番の投句は、結局、瓢吉さんお一人でしたので、無投票当選です。(笑)


     選 16     胸の秘め事 聞くな言うまい   瓢吉

   締め切り時間後に、師匠から、五七五の投句がありましたが、これは、なにか
  の間違いとみて、なかったことにしましょう。(笑)
   それにしても、この16番はいい付句ですね。


     14         対のレンズも 冴え渡るかな   漱猫
     15   見つかって 黙って立ち去る 覗き穴     まるまど
     16         胸の秘め事 聞くな言うまい   瓢吉


   15番の男(?)は、自分だけの秘密を抱えて立ち去ったのですが、16番で
  は、女の心の内のことよ、と見事に転換しました。
   それと、もう一つ、この16番で初めて、〔恋〕がテーマになりました。
   これは、連句を巻くときには欠かせないテーマだそうで、この半歌仙も少しそ
  れらしくなってきました。
   では、年内の連句会はここまでとして、つぎは、新年1/2(日)18時を締
  め切りとして、17番、五七五の投句をお待ちします。
   その上で、1/5(水)に、この半歌仙18句を巻き上げたいと思います。
   なお、この間も意見交換、提案等は歓迎します」
まるまど「では…、改めて…、


     17 投句  鴛鴦の 一羽となりし 冬の沼   まるまど


   こいつを頼みますよ」
尾女「浮世床の皆様。モテでございます。
   新年あけましておめでとうございます。
   昨年は落語にとどまらない幅広い話題を目を回しながら拝見していました。
   いつかは参加しないとイケナイナ!と思いつつ、今は拝見するのが面白く
  て・・・、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
   投句初体験ですが、尾女という名で、


     17 投句  かがり火に 年始の声や 鏡酒   尾女


   状況説明。
   2000年の変わり目に近所の寺に除夜の鐘を突きに出かけ、田舎の事ゆえ顔
  見知りばかりで、その後、歩いてすぐの神社へ初詣をし、お神酒と甘酒を振舞わ
  れる。
   これもご近所の人ばかりで、にぎやかに『今年もよろしく』と挨拶をした次第。
   本当は神社もお寺も欲張って参ってしまう自分をまな板に乗せたいのですが…。
   俳句も作ったことがないので、添削方、よろしくおねがいします」
宗匠「連句17番の投句は、まるまどさんと尾女さんの二句でした。


     16        胸の秘め事 聞くな言うまい   瓢吉
     17 投句 ア  鴛鴦の 一羽となりし 冬の沼   まるまど
     17 投句 イ  かがり火に 年始の声や 鏡酒   尾女


   選評 ないし 言い訳。
   投句ア。鴛鴦は夫婦仲の良いことで知られますが、ここではなぜか、相方と離
  れてしまったんですね。そして、一羽で寒い冬の沼にいる。せつないけれど、も
  う前のことは忘れようと、前句の恋を離れていきます。
   連句でいう〔恋離れ〕というのは、こういうことでしょうか。いい句ですね。


   投句イ。"かがり火"は作者の状況説明にあるとうり、初詣の賑わいを詠んだ
  句です。
   連句のつながりとして読むと、いろいろなことがあったけれど、除夜の鐘を突
   いて、煩悩は消した(い)、新たな年の初詣の中で、年始の人々の声がきこえて、
   わたしも前を向いて行こうという気分かな、お神酒の力も借りて、、、。
   年が改まったことも合わせて、場面転換になっていますね。


   あとは、いつものとうり選者の気分ですが、新人歓迎の意味を込めて、尾女さ
  んの、"かがり火"をいただきます。


     選 17  かがり火に 年始の声や 鏡酒    尾女


   さて、いよいよ最後の18番です。
  連句の世界では〔挙げ句〕というそうで、『挙げ句の果て』の原語だそうです。
(前掲 「俳句と川柳」)
   締め切りは1/5(水)18時とさせていただきます。12月中旬から巻き始
  めた半歌仙も、二週間かかって卷き上がります。
   参加者も増えてきました。どしどし投句してください」
まるまど「[評 ないし 言い訳]は、とても勉強になります。
   ルールで『恋離れしなさい』という個所もあるんですか」
宗匠「あたしが、一冊だけ読み終わった本(暉峻・宇咲〔連句の進め〕前掲)によれ
  ば、恋の句は二〜三句続けたら、恋離れしなさいとあります。
   この本の歌仙の構成によれば、半歌仙の場合、表(発句〜6句目)と裏(7句
  目〜18句目) 間での中で、恋句は裏の3〜5(通算9〜11句目)の間に二〜三
  句となっています。他の本がどうなっているか、これからボチボチ読んでみます
  が。
   この本の作者二人による〔両吟歌仙〕から、例示してみます。


     裏1   新走りつぐみを添えて届けられ       桐雨(暉峻)
      2      くどき文句をあたためている     冬男(宇咲)
      3   愛と性別ものなりというヤング       桐
      4      落書きふえる冬の尼寺        冬
      5   靴底にガムの張りつく石畳         桐
      6      右も左も外国語なり         冬


   前記の構成より一句早く、2〜3句目で恋句が出て、4句目で恋離れになりま
  した。蛇足ながら、1句目の新走りは新酒のことで、『新酒につぐみまで添えて、
  届けられたとあっては、恋句の呼び出しが考えられます』と解説されています」
無銭「そういうことですか……。
   恋離れ、というより、恋が億劫になるというのは、句にはあまりないですね。
   それに、因まないで、投句します。


     18 投句   みなの名句に 酔いしれる初春(はる)  無銭


   エイヤッと。……、投句してからでは、遅いか、気合は…」(笑)
尾女「何も知らない者は強気です。恥をかきついでに、エイヤッと。(笑)


     18 投句  留守居番 嫗(おうな)と猫と ヒヤシンス  尾女
     18 投句  お三時は 花びら餅と 茶が並び       尾女の母


   弁明と説明。
   87歳の母が大阪から猫を連れてやってきました。
   連句の話をしたら大いに興味を示し、早く作れと矢の催促。俳句も作ったこと
  ないのに無理でっせ。
   明日から家中の者は仕事で誰もいません。87歳に留守番を頼みます。
   私が出し渋っていましたら、母は花びら餅の句をつくりました。
   あつかましくてスミマセン。見てやってください」
まるまど「母娘の句…、味わいがあるなぁ……。
   ならば、あたしも、エイヤッと。(笑)


     18 投句  今年もくるぞ それ大晦日   まるまど


   暮を扱った落語のマクラによく使われる、二宮尊徳の作と伝わっている、有名
  な句、"元日や今年もあるぞ大晦日"の真似句になってしまったが、賑やかしに、
  どうぞ」
宗匠「連句 18番の 投句は、番外飛び入りを含め 初めて 4句も ありました。


     17 かがり火に 年始の声や 鏡酒            尾女
     18 投句 ア 今年もくるぞ それ大晦日         まるまど
     18 投句 イ みなの名句に 酔いしれる初春(はる)    無銭
     18 投句 ウ 留守居番 媼嫗(おうな)と猫と ヒヤシンス 尾女
     18 投句 エ お三時は 花びら餅と 茶が並び      尾女の母


   [選評]
   まづは、尾張の俳人から。(笑)
   娘さんのほうは、初めて二句目とはとても思えません。『エイヤッ!』で、こ
  ういう句ができるというのは、素質があるんですな。
   名詞を三つ並べて日向ぼっこの感じが良く出ています。〔猫と庄三と二人の女〕
  より明るく幸せですよ。(笑)
   母上のほうは、これがすらすらでるとは、だいぶやってますな。日当たりの良
  い部屋で、花びら餅とお茶がある、幸せです。
   猫をつれて大阪からきただけのことはありますね。(笑)
   両句ともいい句ですが、残念ながら、ここは連句で、七七で詠んで欲しいんで
  す」
まるまど「宗匠の言う通り。尾女母娘に錯覚がなくて、五七五ではなく、ちゃんと七
  七とやってたら、抜けていたでしょうね。
   尾女さんのおっ母さんに会いたいですよ、あたしは」(笑)
宗匠「せっかくですから、お二人で連句をされてはいかが?
   たとえば、
  

     発句 留守居番 媼嫗と猫と ヒヤシンス    娘
      脇 花びら餅の 美味さひとしお       母
 

   とでも……」
まるまど「ヨッ! できました!!」
尾女「ありがとうございます。これで、親孝行ができました」(笑)
宗匠「それでは発表。例によって迷いに迷った結果といいたいが、今回は迷わずに、
  無銭さんの句をいただきます。


     選 18   みなの名句に 酔いしれる初春(はる)   無銭


   ということは、


     17   かがり火に 年始の声や 鏡酒       尾女
     18      みなの名句に 酔いしれる初春(はる)  無銭


  で、巻き上がりました」
無銭「半歌仙の巻き上がりおめでとうございます。
   \(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/
   本当は三本締めの図を入れたいのですが、手元にありません。
   \ /、‖、‖、‖、 ‖、‖、‖、 ‖、‖、‖、 ‖、\ /
   これでは、では駄目でしょうか?」(笑)
宗匠「ありがとうございます。0000000 感涙に咽んだ涙のつもりです。(笑)
   縦に書けないのが悔しいです。(笑)


   お待たせしました、まるまどさん。
   年始の句から、一足飛びに大晦日につなげて、〔師走の夜〕をまさに〔ひと巻
  き〕にして見せた裏技! 尊徳先生の句があるからね。賑やかしの効果は充分で
  した。


   また、無銭さん。
   おかげで、足掛け2000年にまたがる半歌仙を巻き上げて、句もよし、酒も
  よしで、初春のお屠蘇に酔いしれた、というわけです。
   あたしも、こういう人を〔交通整理人〕兼〔後見人〕に選んだ自分を誉めてや
  りたいですよ。(笑)


   そして、みなさん。
   かくして、初めての連句も18句揃い、半歌仙が巻き上がりました。
   みなさんの、ご協力に感謝するとともに、この三週間にわたり、メールを開く
  たびに『また、連句か…』とわずらわしい思いをなさった方々へ、衷心よりお詫
  びいたします」
酔聯「お骨折りのほど、大変ありがとうございました。
   発句の"師走の夜"から"酔いしれる初春"まで、並べてみました。
   こうして見ると、感慨深いものが有ります。


     発句 師走の夜 楽の手締めに 送られて       晴坊
      脇      男子出生 なるか雅子妃       まるまど
      3 待たるるは 佐渡の朱鷺より 首長くして    晴坊
      4 花魁のクツ 今 街を行く             まるまど
      5 幾たびも 転び転びて 雪の道          無銭
      6       えくぼの赤子も 生意気な口     酔聯
      7 膝を折り 握り締めたる 五鹿の土        酔聯
      8      尻をはたいて なに食わぬ顔     晴坊
      9 車を曳く 人力の息 石だたみ         酔聯
     10      腰をおろして まず一思案      無銭
     11 さまざまが どうにかなって 新玉の      まるまど
     12      三軒茶屋の 今に驚く        酔聯
     13 ロケットで うさぎは帰る 冬の月       無銭
     14      対のレンズも 冴え渡るかな     漱猫
     15 見つかって 黙って立ち去る 覗き穴      まるまど
     16      胸の秘め事 聞くな言うまい     瓢吉
     17 かがり火に 年始の声や 鏡酒         尾女
     18      みなの名句に 酔いしれる初春(おうな)(はる)無銭


   もし、なんでしたら、連句のためのMLを立ち上げる事も可能ですので、その
  時は言ってください」
まるまど「そこまで盛り上げたいね」
宗匠「つきましては、師匠。
   せっかくですから、どうです、もう一回、半歌仙18句を巻きたく、1/8(
  土)スタートで、師匠に発句をお願いしたいと思います。よろしく、お願いしま
  す」まるまど「あたしが発句かい? う〜〜ん……。そんなことを言われると、
  倒れそうになるな」
宗匠「師匠。発句ですよ。発作じゃありませんよ」(笑)
まるまど「宗匠の言う言葉かね、まったく」(笑)

2000・11・2 UP