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芝居三昧

「オフイス樹」便り 歌舞伎・上から会 一般演劇 古典芸能


1999/06/10 六月大歌舞伎 昼の部 歌舞伎座

『苅萱桑門筑紫〇(車偏に栄)』
                   (かるかやそうもんつくしいえづと)
       通称 『いもり酒』。
       寝ちゃった。談志の会だったら摘み出されるところ。
    『夏祭浪花鑑』(なつまつりなにわかがみ)
       団七九郎兵衛・松本幸四郎  一寸徳兵衛・中村梅玉
       釣船三婦(さぶ)・中村富十郎
      歌舞伎は殺しが好きなのでしょう、きっと。それを長々と演ずる。
しかし、殺人も様式美で表現するから、誰も文句は言わない。仮に、どっか
の劇団が歌舞伎と同じ所要時間を使って、リアルに殺しを演じたならば、悪
評紛々だろう。そこへいくと、滑稽噺には殺し場面はほとんどない。落語[ら
くだ]は死人にカンカンノウを踊らせるなんざぁ、洒落そのもの。
     プログラムの解説に「三婦(さぶ)」とは、三郎を縮めた「さぶ」
で、原作は「三ぶ」となっていて、「ふ」は変体仮名で「婦」をくずした字
で書いてあるそうだ。
     『二人椀久』
       椀屋久兵衛・片岡仁左衛門  松山太夫・坂東玉三郎
       二人に「いい踊りをワンキュー ベルマッチ」


1999/06/13 六月大歌舞伎 夜の部 歌舞伎座

『鎌倉三代記』
       夜寄席から駆け付けたので、遅れて客席へ。座るやいなや、寝て
しまった。
    『鐘の岬』
       清姫・中村富十郎
       荻江節で踊る娘道成寺。しんみりさがいい。
    『うかれ坊主』
       願人坊主の源八・中村富十郎
       しんみりの後に、こうも飄々と体が変わるものなのか。
    『伊勢音頭恋寝刃』(いせおんどこいのねたば)
       福岡貢・片岡仁左衛門 仲居万野・坂東玉三郎
       玉三郎の万野に客の反応はすごい。一言、ひとことにワーッとい
うざわめき。


1999/06/23『番町皿屋敷』 国立劇場の歌舞伎教室。

青山播磨・中村信二郎  お菊・中村芝雀
     男(青山)の了見を試すために故意に家宝の皿を割るお菊の行為
は、あたしにも断じて許せない。青山がお菊を斬殺に処すのも当然と思う。
が、お菊を殺した後、自棄も手伝って、外へつまらない喧嘩の手助けに飛び
出すのは薄っぺらになってしまって後味悪い。以前から、落語の[厩火事]
についても同じことが言える、と思っていた。長屋のお崎さんに「ぐうたら
亭主の了見を試すには、やつが大事にしている皿を割ってしまえ。そのとき、
やつが体を心配してくれるなら、よし。皿の心配ばかりしてたら、別れろ」
と薦める兄貴分もあたしには許せないのだ。たとえ、相手が最低の男でも、
心を試すためでも、その男の所有器物を破損させるのは犯罪であり、兄貴分
も教唆という犯罪である。仮に、己れの女房が亭主の心を試そうと、亭主が
大事にしているゴルフのクラブを故意に折ったとしたら、あなたなら、どう
しますか。ニコニコ笑っていられますか。女房を許しますか。あたしは[厩
火事]では、皿を持ち出して、故意に倒れて、亭主には皿が割れたように思
わせる程度にとどめる演出をとっている。そうしないと、演ってて後味が悪
いのだ。しかし、一般の聞き手から、多くの者が演っている既成の[厩火事]
の故意に皿を割る演出に関して「後味が悪い」という評を聞き出したことが
ない。あたしが可変しいのかしら。


1999/07/02『ベルナルダ・アルバの家』遊戯空間公演
 新馬場の六行会ホール

ロルカ 作 篠本賢一 演出
     外国作品は見慣れぬこともあってくたびれるが、このスペインの
芝居はなかなかどうして、出演者は女だけであったが、見応えがあった。声
はみな幅があり、安定感もあり、好感持てた。「女だから」と許される部分
を持ちながらの芸は持たないと言われる。それを感じさせないのがいい。女
の寄席芸人もこの芝居を見ると参考になろう。


1999/07/07 (水) 市川猿之助大歌舞伎七月公演 夜 歌舞伎座

『慙紅葉汗顔見勢』(はじもみじあせのこおみせ)
    本題は  猿之助十八番の内 『伊達の十役』(だてのじゅうやく)
    伊達の十役というが、細かくいうと十一役。こういうことをいうの
は圓窓だけらしい。幕開きに猿之助の口上があるので、十一役。つまり、重
役と工場長で十一役という洒落。その口上は大きな写真のパネルを立て、十
役を悪と善に分けて説明もするので、鑑賞に役立つ。「だから、猿之助歌舞
伎はいやなんだよ」と通ぶった人もいるそうだが、通は歌舞伎ファンのほん
の一部。細かいことはわからない多くの大衆が猿之助の芝居を満員にしてい
ることを考えると、歌舞伎とはなにかもわかってくるような気もする。歌舞
伎も落語もいろいろあって、楽しいのだ。通は一つにしたがる傾向があるの
で、ちょいと困る。
    障子を開ける場面でその障子が外れて、役者はアドリブで側へ置い
たが、生死の境は難しいという、脳死の問題まで発展はしそうもない洒落。
    花道でのすれ違いの早変わりがやはり興奮させる。瞬間、涙が出た。
後半になると、客も替るのを解ってて楽しんでいるようで、前半とは違う反
応があるのが面白い。歌六が下手の袖を見て、与右衛門(猿之助)に言う。
「勝元さま(猿之助)がいらっしゃった。急げ、急げ」と。これで、客が受
けるところがいい。楽しんでいる証拠だ。安っぽい芝居だと、ここで役者が
悪ふざけして室を落としてしまうのだが、そうさせないところが憎い。