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 窓門会文庫

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101号

平成14年度 国語施策懇談会

平成15年3月25日  都道府県会館101大会議室
消印 2003・3月25日
差出人  千馬 千恵
雨の火曜日の朝
  杢べえ氏と一緒にラッシュの丸ノ内線に乗り、赤坂見附に。毎日の通勤ご苦労さ
 ま。実感。
9:30
  受付にて袋に入った資料(冊子3冊と、オヤ! 日大の風俗論試験問題と桐朋中
 の入試問題も入っているではありませんか!)をいただく。
  師匠は午後「国語力を高めていくための方策について」のパネリストとして講演
 されるのだ。
  席を確保してからコーヒーを飲みに行く。15階にある喫茶店の窓から見れば、
 雨にけむる国会議事堂が……。
10:00
  河合文化庁長官の挨拶の後、国立国語研究所長の文化審議会国語分科会「審議経
 過の概要」説明。
10:50
  午前のメイン、大村はまさんの意見発表。
  1906年生まれ! 凛としたお声で「言葉の貧しさは人間の貧しさ。言葉を豊
 かに使いこなすこと、大切にすることが豊かな精神世界を築く」とおっしゃる。そ
 して、教育者としてずっと歩まれてきたその中から実践・研究された、まことにき
 めこまやかな教育方論を呈示。
12:30
  なんと1時間半以上もお話なさって下さった。ムダがなくわかりやすく、話にひ
 きこまれた。
  昼の休憩。今日の参加者は、やはり教育関係の方が多いのだろうか。私の隣りの
 席の若い女性も学校の講師をされているそうで、午前の大村はまさんの話に、「今
 までの自分に反省する点が多くあった。あんな(大村さんのような)先生になれる
 だろうか」と、とても真剣。
13:45
  いよいよパネルディスカッション! 圓窓師匠の登場です。
  パネラー(左から)
  ・水谷 修(名古屋外語大 学長)
  ・入部 明子(ことばの教育専門 つくば国際大 講師)
  ・川島 隆太(脳医学の専門 東北大 教授)
  ・圓窓師(もちろん落語家)※お着物をお召し☆
  午後になっても雨は止まず、また会議室も200人以上の参加者の熱気。そこへ
 司会とパネリストの登場です。
  いま流行の言葉でいえば「ぶっちゃけ」お役所の催しというものはお堅いもの。
 ところが、噺家さんを、しかも圓窓師匠を呼んでくださるなんて、さすが文化庁!
「実際のことばを使うことに命をかけていらっしゃる、三遊亭圓窓師匠です」と司会
 の水谷氏がお着物をお召しの師匠を紹介すれば、なんと会場の雰囲気のよいこと。
 うれしくなりました。
  前半は3人各々の立場から一人ずつ情報を提供、後半はどんな方策が必要かとい
 うことがパネルディスカッションされました。
  入部氏の説くアメリカナイズされたコンピューター(音と映像)による言語教育
 に、あぁ、遅れないようについていかなくちゃと思い、又、川島氏の脳から見た国
 語教育では「2才までテレビを見せるな」との言葉に、あー、もう手遅れだ!(萬
 窓さんや窓輝さんのところは、がんばってネ)と嘆いたり、とても刺激的な「楽」
 習をさせていただきました。


  本日のパネルディスカッションにおいての圓窓師匠のご発言から。
 ・「出来ちゃった教育」⇒ 赤ちゃんがお腹の中にいる時から、母親は心して教育
 (コミュニケーション)をおこなうこと。(なんか、あわてている妊婦さんの顔が
  浮ぶ)
 ・「当たり前なことに重要なことがある」⇒ 日常、当たり前すぎて忘れられてい
  ることがあるが、原点に立ち返ってみる。例えば、食べ物→命 のように。
 ・「聞くは一生の宝」⇒ ことわざに「聞くはいっときの恥」というのがあるが、
  この「恥」を恐れるあまり、聞かぬ日本人がいる。言語発達を邪魔していること
  わざもあるかもしれない。
 ・「民話が家庭からなくなった」⇒ 同じように「家庭教育を大事に」⇒ 親から
  子へ語り伝える(コミュニケーション)大事さ。(川島氏も乳児期のコミュニケ
  ーションが後に影響するとのご指摘あり。私は「落語は小学4年から!」を提唱
  したい!)
 ・「話す・聞く・思い描く」⇒ 圓窓師匠の本日の一番のベースになっている話。
  窓門会の会員でありますならば、既に承知。(噺・咄・「話」のところで、「話」
  は「言」に「した(舌)」とおっしゃって、ああ師匠の言葉!ってうれしく聞か
  せていただきました)
・「学校の先生はいい芸人になってほしい」⇒ 先の「家庭教育を大事に」と共に、こ
  れからの(教育の)方向性について述べた言葉。ツマラなければおトイレに行っ
  ちゃったり、帰っちゃったり出来る寄席(うわぁ!)と違って、生徒は下手な先
  生ともずーっと週5日、1年間の興行につきあわなくてはなりません。この言葉
  で思いましたのは、午前に意見発表された大村はま先生は、すごい芸人さんだと
  いうことです。さらに圓窓師匠、師匠は日大の先生、ということは「いい芸人は
  学校の先生に」も成り立つんですね。
16:30
  ということで、パネルディスカッション、閉会でした。おあとがよろしいようで
  ……。
その足で
  雨の赤坂から池袋「二ツ目勉強会」。(敬称略)
  小駒[浮世床]。? ←途中から入場の為。水色の着物が印象的。
  窓輝[ぞろぞろ]。○ 愛車(自転車)のマクラもさりげなくてよかった。今回、
 サゲに違和感なし! 語る時の表情もよし!
  久蔵[短命]。△ なんか元気がないのです。どうしちゃったのでしょう。がん
 ばれ、西東京の星! 
  〜 お仲入り 〜
  小権太[出来心]。◎ よく声が出ていて、登場人物もみな陽気でよい。ハリキ
 リすぎて(?)足のシビレのまま高座を下りていったのはご愛嬌!?
  金太 ○ あらかじめ「風邪」と告げる、お茶を飲んでの高座。声、つらそうで
 あったが、負けぬ一生懸命さが噺に出ていた。
  

  会場で、和田さんと岩沼さんにお逢いする。客席には権太楼師が。他にも何人か
 いらっしゃっていたらしい。こういう会は、演者は緊張するでしょうね。

2003・10・10 UP









8 0 号

来 年 も 続 け て ほ し い 圓 朝 祭 り

消印 2002・8月11日
差出人  千馬 千恵


 立秋も過ぎましたが、多摩川にはアザラシ泳ぐ夏。残暑お見舞い申しあげます。


 8月11日「吉例住吉踊り」の初日でしたが、吉窓さん、ゴメンナサイ。15
日と千秋楽参ります。
 この日、「圓朝祭り」に。
 まずその前に「上野鈴本早朝寄席」。
 志ん太〔元犬〕(元気になって何より)、ひらり〔桃太郎〕(着物の大きな柄
が似合ってます)、栄助〔芝居の喧嘩〕(きょうのピカイチ! 髪は短い方が個
人的によいと思う)、あし歌〔宗論〕(ウワサの彼?健在)でした。


 歩いてもよいのだけれど、暑さに負けて湯島より千代田線で千駄木まで。
 菊見せんべい側を歩いていると、反対側に本部あり。
「パンフレットを持っていないと入場できません」の声。慌てて反対側に渡る。
 本部受付の喬太郎さんのお顔「面白いヨ!」と自信ありげで安堵感を覚える。


 さて「圓朝祭り」会場 全生庵へ。お昼前なのに、多少混雑のてい。
 思い起こせば紀伊国屋ホールで催された「寄席の日の設立決起大会」ともあわ
せて、圓窓師匠がファンの意見を発表できる場を設けてくださり、私も窓輝さん
が向けてくださったマイクでいろいろ言っちゃいました。言っちゃったことを今
日まで噺家さんたちが寄ってたかってつくり上げ・・・。ファンにとって夢のよ
うです。
 この暑い暑い夏のお祭りに、汗とともにじわーっとくるものがあります。
 どうかどうか落語を愛する人が増えますよう、「寄席の日」同様、お祭り、来
年も続けていってほしいと思います。


 圓朝さんのお墓で懲りずに一句考えておりましたら、さん吉師をガイドに大蛇
さんがいらっしゃいました。
 アサダ先生は先日のタキシード姿から今日は浴衣に麦わら帽子という出で立ち
でマジック。めったに観られませんよ。楽しい!
 圓窓師匠のテントでは、お久しゅうございますう、窓里さんが師匠のお手伝い。
 お店には「東上線・・・」や「雪おんな・・・」の句の色紙が。
 私はくじ(200円)で角川春樹氏の文庫本「檻」があたりました。本は57
1円! つまりまったくのファン感謝の絶対赤字の大サービス!! わあ!


 ライセンスはないが、センス、?デザインの非公認Tシャツなどをショッピン
グしているうちに再び暑さが・・・。
 パネル展で涼んでいると、おっ、目にも涼しい萬窓さん(なんでそんなに白い
の?)みっけっ! 
 吉窓さんは夕方のかっぽれ総踊りまでに着けるのかな?
 あー、奉納落語。「来年は頑張ってチケットをゲットしよう」と考えながらも
暑さの限界。
「天どんさんには逢えたけど、窓輝さんとは逢えなかったなぁ」とちょっぴり心
残りだけれど、帰り本部のラブリーな太助さんの笑顔を後に家路に着く。

200・1・21 UP









7 6 号

W 杯 に 負 け て な い マ ク ラ

消印 2002・6月23日
差出人  千馬 千恵


 6月23日「三遊亭圓窓一門会」。
 今日はホニホロ2号君と。客席ははやくもいっぱい。
 オヤオヤ、前の方にお揃いのTシャツを着た小さな男の子達が・・・(まさか
まさか、彼らが、池袋演芸場史上初でしょう、紙芝居を披露してくださった小4
の佐々木君とその弟君達とは思いませんでした)
 高座の彼はいっぱいお客様の拍手を受けました。この想い、もしかして「噺家
さんになる!」という気になったりして・・・。どうかな?
 師匠の[ぞろぞろ]が小学4年生の国語教科書に載っているのは、私もほんと
うに子育て経験上、ぴったりの年頃だと思っています。
 この頃の子どもって、大人が思っているほど子どもではないし、でもよくくっ
たくなく笑う柔軟な頭を持っています。
 さてさて、中学生になった我が家の2号君は久々の吉窓さん[きゃいのう]の
鬘から煙が出た場面では、声変わりした声で笑っておりました。


 今日の一門会における窓門的サッカーW杯マクラについて。
【圓窓】 師匠は決してW杯に興味がないわけではないのですが、しかし今日は
”紙”と”芝居”の口演なので、高座のまくらは、このところ話題の歌舞伎→鴈
治郎さん→人間国宝という流れでした。
 雑誌、インターネットなどで師匠が”気になること”を調べているのがわかり
ます。
 さて、このマクラの中で「落語家は化粧しません。素顔で勝負します」は素敵
なフレーズです。
【吉窓】 ベッカムヘアーはあたしだって二年前なら出来た」「寄席にもW杯の
客席の一筋でも入ってくれれば・・・」など自ら身につまされる話(?)を語る
吉窓さん。
 そんなマクラの中でしっかりと「噺家の美学」(美学ですよっ!!)という言
葉を聴きました。これは笑いの中にも感動がありました。
 W杯、日本は終わったけれど、噺家の吉窓はこれから横浜(7月)、国立(9
月)と高座が待っています。
【窓里】 窓里さんは総じて辛口。
 W杯試合終了後の選手のユニフォーム交換についても、いつものとおりHな事
も言っていたけれど、どんどんと論が進むにつれ、気がつくと「文化を大切に」
という、まことにもって正論(拍手!!)を滔々と述べていたのであります。不
思議ですねえ。
【萬窓】 おめでとうございます!
 そうです、お父さんになられた萬窓さん。きっとベタベタなパパさんなのだと
思います。
 しかし、高座はあくまで粋にクールに。W杯にかくれたムネオ氏の事を語って
おりました。演目の[紙入れ]の噺に半分入っているような口のかたい「ハマグ
リの7人」うけていました。
【窓輝】 W杯で大好きな野球がサッカーにおされてしまったことに不満の趣旨。
 データによると本日のお客様の60%がW杯を見ている。つまりアンチW杯派
の40%のお客の支持を得ようと堂々の直球勝負であった。
 ただし、「それ以上は語らない」と控えめなのは、いかにも窓輝さんらしい。
 だが最後に「下着のWカップは好き」とポロリ。兄弟子の窓里さんの影響!?

2003・1・21 UP









7 5 号

ちょっとグルメなミステリー噺

消印 2002・6月20日
差出人  千馬 千恵


 サンモールのゲームセンターをぬけると建物の2階は寄席だった。
 6月20日なかの芸能小劇場「新しい噺絵巻」。
 木戸にて圓窓師匠に「今度の句会27日。大丈夫? 兼題は守宮ですよ」「ハ、ハイ
」四苦八苦しております。守宮も何匹出てきたことか・・・。心配してくださり・・・。


 前座の彦丸さん[子ほめ]の後、歌彦さん[空海のひつぎ]。
 この会は初登場。でも日曜日、鈴本早朝寄席(太助[幇間腹]、◎さん光[蛙茶番]、
歌彦[勘定板]でお逢いしたばかり。
 突然「ニコン」という語が頭に一撃。それからは、かなり奇想天外な展開に。古井戸
は「マルコビッチの穴」か「ドラえもん」か。歌彦さん、さわやかにお客をけむに巻く。


 この会の紅一点メンバー菊千代さんはしっとり桃色の御召物で登場。[飽き性]。
 ああ、おハナちゃん! これはフクザツな女心でしょうか・・・ね。でも新吉さんは
かわいそう・・・どうする、どうする・・・!


 正雀さん、江戸から湯河原へ行く舟の中の噺。
 芸人の「三笑亭可楽ない」と太神楽 「鏡味小ぜに」の両人と舟に乗り合わせた人た
ちが皆で「こわい話」を。誰の話が一番こわいか?・・・。オチは途中で見えた!?


 一琴さん[あいぼれ]。
 ガンバレご隠居! 吉原の女性の気性は、噺の中でいままでもよく出てくるおきまり
のパターン。でも、ちょっとこの噺のオチ、あまり気分がよろしくない。現代(いま)
は、なんたって鴈治郎さんですもの。


 この季節にぴったり(!?)なのは「きのこ長屋」。
 南喬さん。本日の口演はダジャレのオンパレード! おかしすぎ! 昨年の南喬さん
のシリアスな口演とどちらが本来の南喬さん? いろいろな南喬さんに魅了されます。
今日はただただ笑うだけ。ハイ、ソレだけです。


 トリは圓窓師匠[そば食い地蔵]。
 そば屋のおじいさん、おばあさん夫婦の様子がとてもいい。特におばあさんは、慈愛
のある人です。お互い助けあって・・・。私もあやかりたい、カヤツリタイ・・・。「
飽き性」のおハナちゃんも見習うといいです。(笑) 
 よだれ掛けはミステリー。店に食べに来た男はお地蔵さんなのか? 果たして老夫婦
の息子は生きているのか? ジャンジャン!
 北の小さな町のそば屋でおこった人情たっぷり、そしてちょっとグルメなミステリー
噺。当然のこと聴いた翌日、おそば食べました。もちろん葱入れまして。

2003・1・21 UP