圓窓五百噺ダイジェスト(る行)

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留守小坊主(るすばんこぼうず)

圓窓五百噺ダイジェスト 15 [留守番小坊主(るすばんこぼうず)]

 村の大きな寺の和尚が外出するにあたって、小坊主の西念、珍念に「器物を壊すで
はないぞ。菓子鉢の饅頭は食べるでない。あの饅頭の中には鼠退治の毒が入っておる」
ときつく言った。
 留守番を仰せつかった二人は思い切って遊んだ。隠れんぼ、鬼ごっこ、相撲、忍者
ごっこ。それらに飽きると、座布団を小さく畳んで、紐できつく縛って、こいつを蹴
りっこをした。こうして、お寺で物を蹴り合いしたのが、サッカーの元祖だ、という
説がある。釈っ迦ー、というぐらいですから。
 西念の蹴ったのを珍念が手に持って走り出した。西念が後を追っかける。これが、
日本におけるラグビーの始まり。
 布団を投げたとき、皿小鉢の飾ってある棚のほうに飛んでいって、皿に当たって落
として割ってしまった。
「しかたがない。こうなりゃ、同じことだから、お饅頭も食べちまおう」
「でも、毒が入ってるんでしょう?」
「入ってやしないよ。和尚はけちなんだ。人に食べられたくないから、そう言っただ
けなんだ」
 二人は饅頭を残らず食べてしまった。
「これで…、あと、どうすんの…?」
「和尚が帰ってきたら、大きな声で泣いてりゃいいよ。あとは、あたしがなんとかす
るから」
 夕方、和尚が戻ってきた。
 二人が一斉にワーッと泣きだした。
「これこれ。どうしたんじゃ。二人で泣いて。喧嘩でもしたのか」
「そうじゃありません。二人で遊んでて、投げた座布団がぶつかって、和尚さまの大
事している棚の皿を割ってしまったのです」
「だから、出がけにあれほど言っただろう。謝ればすむというもんじゃないぞ」
「ですから、死んでお詫びをしようと、毒入りのお饅頭をみんな食べました」

[留守番小坊主]の関連は、圓窓五百噺付録袋/落語と狂言の交わり/[留守番小坊主]と〔附子〕
2000・6・15 UP