圓窓五百噺ダイジェスト(せ行)

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銭たれ馬(ぜにたれうま)

圓窓五百噺ダイジェスト 2  [銭たれ馬(ぜにたれうま)]

 汗水流して働くことを好まぬ又蔵は、いつもゴロゴロ、ブラブラしている。
 ある朝、目を覚まして、つくづく考えた。
「銭が欲しいのォ。家にある物は、銭が十文と笊と痩せ馬だけか。よし、これで、な
んとか、銭儲けをしよう」
 笊に十文入れて、痩せ馬を引っ張って、近くの長狭川へやってきた。馬を繋いで、
笊を抱え、川の中に入ると、銭を洗いはじめた。
 それを通りかかった、村の長者が見て、声をかけた。
「なにをしているのだ」
「この痩せ馬が馬糞と一緒に銭をたれるで、その銭を洗ってますのじゃ」
「ホー、珍しい馬じゃな。いくらたれるのじゃ」
「日に五〇文はたれるのじゃ」
 これを聞いた長者は、何度か掛け合って、五両で買い取った。
 その日から、長者は自分の食事も忘れるほど、馬にせっせ、せっせと、飼い葉を与
えた。大豆、小豆から、米まで食わした。
 ところが、何日たっても、馬は馬糞はするのだが、一向に銭をたれない。怒った長
者は股蔵の家へ怒鳴り込んで行った。
「嘘をついたな、又蔵。銭なんぞ、たれねぇぞ」
「飼い葉、やったかの」
「ちゃんとやった。大豆、小豆、米までやったぞ」
「米なんぞやったって、駄目だ。銭をたれる馬だで、小判を食わせなせぇ」

1999・11・13 UP